みなさん、CREALのホテルファンドの公表資料を見て、鑑定評価額がどのように求められているか分かりました?
「何がどうなってるのかさっぱり分からない...」
という方は今回の記事を見て下さいね。
公表されている鑑定評価概要書を見ても、普通は何がどうなっているのか分からないと思います...。
ホテルの評価って、これまでまさに私が仕事でやってきたことのど真ん中ストライクなので(ホテルの評価はこれまで何十回もやらせていただきました。このブログでは私が経験したことしか書かないようにしてます)、今回はCREALからの提示資料を元に鑑定評価の内容を紐解いてみました。
これまで何気に投資していた方も、投資先の評価情報は知っているに越したことはありません。
ではさっそく。
クラファンは情報が公開される
CREALは不動産投資型クラウドファンディングなので、投資家が直接個別の物件に投資でき、運用によるインカムゲインと売却によるキャピタルゲインが投資家に分配される仕組みになっています。
この点はJリートや私募リートと同じですね。
クラファンなので物件の特定が可能で、CREALホームページ上にもある程度情報が公開されています。鑑定評価額については概要書のみ公開されていましたね。
鑑定評価額は「JLL森井鑑定」が行っていて、鑑定評価額は9.66億円となっています。
直接還元法による収益価格
積算価格は今回は省略して、重視される収益価格について解説します。
契約はマスターリースの一棟貸しなので、収支構造は意外とシンプルです。
提示資料では不明な箇所もあり、私の想定要素も少し入っていますが、収益価格はおそらくこのような内訳になるはずです(DCF法は細かくなるので省略します)。
ホテルアマネク浅草吾妻橋スカイの直接還元法による収益価格
単位:千円 | |||
査 定 項 目 | 査定数値 | 備考 | |
賃料収入 | 46,800 | 提示資料よりML月額3,900千円 | |
その他収入 | 0 | 特にない | |
潜在総収益 | 46,800 | ||
(-)空室等損失 | 0 | 一棟貸しのため計上しない | |
(-)貸倒れ損失 | 0 | 敷金で担保するため計上しない | |
運営収益(有効総収益) | 46,800 | ||
維持管理費 | 0 | テナント負担のため計上しない | |
水道光熱費 | 0 | テナント負担のため計上しない | |
修繕費 | 0 | テナント負担のため計上しない | |
PMフィー | 0 | ブリッジシーエステートが対応? | |
テナント募集費用等 | 0 | 一棟貸しのため計上しない | |
公租公課 | 土 地 | 1,478 | 固定資産税路線価より査定 |
建 物 | 3,529 | 提示ERの建物再調達原価より査定 | |
損害保険料 | 30 | 提示資料より | |
その他費用 | 0 | 特にない | |
運営費用(総費用) | 5,037 | ||
経費率 | 10.8% | ||
運営純収益(賃貸純収益) | 41,763 | ||
(+)一時金の運用益(運用利回り1.0%) | 120 | 提示資料より | |
敷金 | 12,000 | 提示資料より | |
(-)資本的支出 | 1,370 | 提示資料より | |
(対再調達原価) | 0.4% | ||
純収益(正味純収益) | 40,513 | ||
還元利回り | 4.20% | 鑑定結果概要より | |
直接還元法による収益価格 | 964,595 | ||
≒965,000 |
ホテル事業収支による検証
本来、アセットタイプがホテルの評価では上記のほか、ホテルの事業収支を査定し、マスターリース賃料(月額390万円)が負担可能であるか検証する必要があります。
今回はホテル事業収支の検証資料が公表されていないため、そこまでは対応できませんでした。
ただ、ホームページ上に、事業収支の検証サマリーの記載があったので下記に転記します。下記アマネクの事業収支サマリーから、ホテル運営利益に対するマスターリース賃料の割合は66.3%ということが分かります。
つまり、月額390万円のML賃料の支払い余裕率は約34%あるので、ホテル事業のボラティリティを考慮したとしても、アマネクは十分な家賃支払能力はありそう、ということが分かります。
ただし!ホテルが稼働して間もないですから、実績を基にした事業収支ではないことは注意です。あくまで事業収支予測は不動産鑑定士の想定項目になっています。
ホテル市況についての記事も書いてます。 www.investment3000.com
アマネクのホテル事業収支サマリー
ちなみにCREALホテル案件はまだ募集中です。自己判断でどうぞ!プレゼントキャンペーンは2018年12月27日までやってますよ。
その他評価に必要な情報抜粋
スキーム関係
貸主:ブリッジシーキャピタル
↓ (マスターリース)
借主:ブリッジシーエステート
↓ (サブリース)
転借人:アマネク
マスターリース賃料・敷金
下記資料より、マスターリース賃料、敷金等が読み取れます。
エンジニアリングレポート(ER)
ERより建物再調達原価(建築費)と資本的支出(長期修繕費用)が分かります。
調達資金・鑑定費用
新規ホテル案件にしては、鑑定報酬は安めですね。
ポイントは還元利回り(Capレート)
与えられた情報からは、賃料は固定で収支構造も一棟貸しなのでシンプルになり、ホテル事業収支とエンジニアリングレポート(建築費と資本的支出)の内容を信じるのであれば、評価で一番のポイントは還元利回り(Cap)、ということになります。
今回、事業収支はデータがなく私も検証しようがないので、投資家側はCapレートが一番のポイントですね。
Cap4.2%、どうでしょう?新築とはいえ、あの立地で私は正直、無理してる感じもしなくもないです。リートなら高級ホテル並みの低さです。保守的に4.5%程度でもいいかも知れません。
仮にCap4.5%にすると鑑定評価額は9億円になります。4.2%で9.6億円なので、まあ、そんなに変わりませんね。
今回のケースでは、ホテルの事業収支検証を除けば不動産収支の査定がシンプルになるので、アマネクが家賃負担可能であることを前提とすれば、どの不動産鑑定士が対応しても鑑定評価額が大きくブレることはありません。
不動産収支で不動産鑑定士の判断要素が入り込む要素は基本的にCapのみとなるはずですから。
最後に
最後に1点気になった箇所を。
本ファンドは、アマネク吾妻橋を2年以内に外部へ売却することを予定しています。売却先候補としては、主に、ホテルアセットを扱うREIT(上場・非上場)、ファンド、一般事業法人を想定しています。
このような記載がありますが、9億円程度のホテルをリートや私募ファンドが買うとは思えませんので、実際のところ、一般事業法人か個人投資家が買うことになると思います。
売却時にキャピタルゲインを得るためにはCapを下げてリートに売却するしかないのですが、2年後のホテル市況、すでに期待利回りは下限ですがどうなるでしょうか。市場分析については、またじっくり調べてブログで公開します。
このようにちゃんと調べると「ん?」って思う箇所が出てきますね。
やっぱりよく調べず適当に投資しちゃいけません。
その他、土地価格について「あれ?」これ無理してない?って思ったので、また時間があれば積算価格を紐解いた記事も書こうと思います。