不動産クラウドファンディング投資研究所

サラリーマンを卒業した不動産鑑定士が、不動産クラウドファンディングに投資してみた

SBISL期失から学ぶ担保評価が変動する3つの理由とスキームの改善点

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僕は投資していませんでしたが、SBISLで期失していたファンドの元本回収率が約80%だったようです。ただ、当初の担保評価額の約60%の売却額だったとか。

 

「なんでこんなに担保物件の評価額がブレるんだろう?」

 

と疑問に思う投資家もいると思います。

 

不動産には同じものが存在しません。全ての物件はこの世に1つだけです。

 

では、「1つの投資物件(担保物件)」の評価額が変動する理由は何でしょうか?

 

  

理由1:人的な要因

 

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理由の一つは、物件を評価する不動産鑑定士によって査定する価格が異なることもあるからです。

 

あ、ちなみに僕は「ソシャレン・クラファン投資家」かつ「担保物件(投資物件)を評価する不動産鑑定士」という両サイドに所属してます。

 

不動産鑑定士も生身の人間で機械ではありませんから、1つの物件を複数の不動産鑑定士が評価して、全く同じ価格になる方ことの方が稀です。

 

1つの物件の「取得時」、「運用時」、「売却時」の評価を別々の不動産鑑定士が担当することもよくあるので、その時々で評価額がブレる可能性があります。

 

そしてどんなに大企業であろうが、物件を評価しているのはその時々の1人の不動産鑑定士です。できれば不動産鑑定士の業者名や実績を確認したいところですが、リートのように公表義務がないため、知る術がありません。

 

これが人的な要因で投資物件(担保物件)の評価額が変動する理由の一つです。

 

理由2:依頼者が貸し手か借り手か?

 

もう一つ、人的な要因とは別に、政治的な誘因の視点から考えてみます。ただ、大前提として、

 

依頼者側から不動産鑑定士に価格操作のプレッシャーを与える

 

ことは当然アウトです。それに答える不動産鑑定士は言語道断で、社会問題にもなりかねません。

 

記憶に新しい森友学園の国有地払い下げ問題では、本当に適正な鑑定評価額だったのか...と大問題になりました。

 

依頼者プレッシャーについては不動産鑑定業界も非常にナーバスになっています。管轄省である国交省も目を光らせていますので、ヤバい依頼者や鑑定業者はすぐにバレます。悪いことは止めましょうね。

 

さて、話を戻して、依頼者プレッシャーまでいかなくても、

 

投資物件(担保物件)の評価依頼者が「貸し手」側なのか「借り手」側なのか

 

が分かるのであれば確認しておいた方がいいと思います。なぜなら、

 

  • 貸し手(投資家)は投資物件(担保物件)の評価額を低く査定して欲しいというインセンティブが働く(デフォルトした場合、元本毀損の可能性が低くなるため)。
  • 借り手(SL事業者も含む)は投資物件(担保物件)の評価額を高く査定して欲しいというインセンティブが働く(担保余力があれば、より多くお金を借りる(貸す)ことができるため)。

 

からです。ですから、我々投資家が投資物件(担保物件)の評価を見る場合は、

 

その物件を評価をしているのが「貸し手」側なのか「借り手(SL事業者含む)」側なのか

 

という点に着目すると、また違う角度から投資物件(担保物件)の評価額を検証できるはずです。

 

ソシャレンスキームの改善点

 

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ただ、現在のスキームでは物件を評価するのは「借り手(SL事業者)」側になっているんですけどね。ここにソシャレン業界のスキーム改善の余地はあると見ています。

 

利回りは下がりますが、投資家側が報酬を支払って担保評価するスキームの方がいいんじゃないか

 

と思うわけです。利回り重視よりも安全重視の傾向が見える今の時代の流れからは、その方が投資家の需要はあると思います。

 

将来的にはこの新スキームを採用した事業者が登場するかもしれませんね。

 

理由3:不動産市況は常に変動している

 

そして最後3つ目の理由は、

 

不動産市況は常に変動しており、評価に将来予測を織り込むには限界がある

 

からです。実質的にはこれが担保評価がブレる一番の理由です。

 

上記3点の理由から、万が一デフォルトした場合、担保評価額で売却できる保証はどこにもないことが分かります。

 

みんなのクレジットやラッキーバンク、maneoの担保評価は論外としても、担保評価額はブレることも織り込んだうえで投資判断をすれば、LTVの高いファンドに対する考え方も変わってくると思います。