担保物件の査定内容が分からないソーシャルレンディング。
OwnersBookの新規募集「中野区新築マンション第2号ファンド第1回」について案件分析をしてみて、その評価の正確さを検証してみました。
中野区新築マンション第2号ファンド第1回の収益価格
まずは今回の担保物件を、僕が収益価格(直接還元法)で概算するとこのようになります(限られた情報の中の個人的な概算値です)。
なお、OwnersBookの評価額は3.13億円です。
単位:千円 | |||
査 定 項 目 | 評価内容 | 備考 | |
賃料収入 | 16,117 | 住宅部分14,000円/坪、事務所部分18,000円/坪 | |
礼金収入 | 489 | 住宅部分2カ月、事務所部分2カ月 | |
更新料収入 | 543 | 住宅部分1カ月、事務所部分1カ月 | |
潜在総収益 | 17,149 | ||
(-)空室等損失 | 858 | 保守的に住宅部分95%、事務所部分95%と査定 | |
運営収益(有効総収益) | 16,291 | ||
運営費用(総費用) | 3,063 | ||
経費率 | 18.8% | 経費率は保守的に査定(※) | |
運営純収益(賃貸純収益) | 13,228 | ||
(+)一時金の運用益(運用利回り1.0%) | 75 | 敷金:住宅部分2カ月、事務所部分12カ月 | |
(-)資本的支出 | 470 | 平均的な新築レジデンスの水準で査定。 | |
純収益(正味純収益) | 12,833 | ||
還元利回り | 4.10% | 市況水準及び新築プレミアムを考慮。 | |
直接還元%法による収益価格 | 313,000 | ||
≒313,000 | LTV80% |
賃料はOwnersBookから提示された賃料をそのまま使ってます。賃貸面積の詳細が不明なため、中間値をとって住宅部分30㎡代は35㎡で、事務所部分30㎡代は35㎡で査定しました。
保守的に(物件価格が高くなりすぎないように)査定すると、OwnersBookの評価額3.13億円と合致します(つまり、OwnersBookの担保評価は固めに査定されている)。
概算のポイントは以下のとおりです。
中長期安定稼働率 95%
機関投資家向けにはネガティブ材料のない現在の不動産市況で、新築レジで中長期安定稼働率95%以下ではまず査定しません。新築レジであれば通常のJリートや私募ファンドでは97%でもあり得えます。
つまり、OwnersBookは稼働率を下限値(保守的に)査定していると考えられます。
経費率 18.8%
詳細は契約が不明ですが、下記の点より個人的に経費率を更に抑えられる可能性が高いと予測します。
- 住戸数の多いマルチ想定で経費率20%程度になる。戸数の少ない今回の対象物件ではPMフィーが抑えられるので、経費率は低くなるはず。
- 貸付先がPM管理会社であり、自社でPM業務を行うことも考えられるため、更にPMフィーを抑えられる可能性さえもある。
- マスターリースの一棟貸し契約であれば、経費率は更に低くなる。
費用項目は契約によりけりですが、上記分析から少なくともOwnersBookが無理に経費を抑えているとは考えにくいと思います。
Capレート 4.1%
NOI利回りとNCF利回りは不動産初心者が間違えやすいで注意して下さい。NCF利回り(Capレート)は一時金と資本的支出を考慮するため、NOI利回りより0.2~0.3%低くなります。また新築にはプレミアムで0.1%低く査定するのが通常です。
市況水準、物件の個別性からCap4.1%は妥当な水準で違和感はなく、少なくともOwnersBookは適正な水準でCapを査定していると考えられます。
OwnersBookの担保評価力
不動産は情報格差の世界です。初心者相手にだまそうと思えば、いくらでもできてしまうのが不動産の怖いところです。さらにソーシャルレンディングの貸付先の匿名性も加わるので、2重に怖い。
今回の案件分析の結論は、OwnersBookの担保評価は妥当で、むしろ元本を毀損しないように保守的に査定されていることが分かりました。
ただ、あくまで僕がやったのは「僕が考える客観的な、ありのままの評価」。
人それぞれに評価や業者選びの考え方はあって然るべき
で、もちろん僕は他人の考えを否定したくありません。逆に他の人のいろんな考え方を知りたいと思ってます。
概算にはある程度時間がかかるので、さすがに貸付型で毎回分析はできません....が、今後も時間を見つけては分析してみたいと思います。
※クラウドファンディングは、元本を保証する商品ではありません。”必ずご自分で”納得するまで調べ、リスクを許容した上で、投資してください。