日本政府が掲げる2050年のカーボンニュートラルの目標実現に向け、再生可能エネルギーの最大限導入が提唱されています。
そんな中、GK-TKスキームで太陽光発電事業に投資するクラウドファンディング「SOLMINA(ソルミナ)」が登場しました。
「ソルミナって何だっけ?」という方はこちらの記事で書いておりますのでご参照いただければ幸いです。
【関連記事】SOLMINA(ソルミナ)で高利回りの太陽光発電事業に投資
今回は個別ファンドとしてソルミナの3号ファンドをじっくり見ていたのですが、募集利回りが「5.17%」ってなってるんですよね。
皆さんは「ん・・・やけに細かいな」と思いませんでしたか?
結論から言うと、ソルミナの利回りが細かい理由は、利回りを「IRR(内部収益率)」を使って算定しているからです。
不動産鑑定ではお馴染みのIRRですが、普通の方には馴染みがないのかな~と思いましたので、今回は簡単にIRRについて解説してみたいと思います。
簡単に・・・といってもなかなか1回の記事で書ききるのは難しいテーマなのですが・・・あ、タイトルには「今さら聞けない」と書きましたが、全然そんなことないですからね。どんどん聞いて下さいませ(笑)
SOLMINA再エネファンド3号
- ファンド名:SOLMINA再エネファンド3号
- 事業体:合同会社再エネファンド
- 事業内容:再生可能エネルギー発電所の取得、所有及び運営事業
- 契約形態:商法第535条による匿名組合契約
- ファンドスキーム:事業投資型ファンド
- 募集金額:8,470,000円
- 運用期間:5年(2021/10/21〜2026/9/30)
- 利回り:5.17%(年平均)、目標分配率:122.03%(合計)
- 募集期間:2021年9月15日12:30~10月7日
まずはソルミナ3号ファンドの概要から見ていきます。
本ファンドをざっくり言うと、投資家から集めた資金で太陽光発電設備を取得し、発電した電力を東京電力に売って収益を得るファンドです。
ちなみに安心ポイントとして「太陽光発電設備は稼働済み」で、「FIT(固定価格買取制度)」が適用されてますね。
でで、本題の利回りです。冒頭でも書いたとおり、利回りは5.17%で「IRR(内部収益率)」を使って算定されています。
IRR(内部収益率)とは
IRRは証券化対象不動産の評価では必ず使われる利回りの一種で、平たく言えば「取得価格、期中のキャッシュフロー、売却価格まで考慮した利回り」です。
IRRは「将来得られるお金を現在の価値に換算した金額」から求めます。
ですから、現在の投資額と将来得られるキャッシュフロー、売却益がわかれば、誰でもIRRを求めることができます。ちなみに僕も本業ではエクセルで計算しています。
IRRを今回のケースに当てはめてみると、
- 稼働済みの太陽光発電所の取得資金
- 売電価格(固定)による毎期のキャッシュフロー
- 5年後に施設を売却した際のキャピタルゲイン
を当初に予想し、それらをすべて考慮した利回りとしてIRRを査定し、それを一般投資家に公表してくれています。
いったんまとめます。本件は「取得時、期中、売却時のすべてを想定すると5年かけてIRR(≒目標利回り)約5%で利益を返還します」というファンドです。
別の角度から言えば、IRRは「時間の概念も含んだ利回り」とも言えます。
お金の価値は時間によって異なります。例えば5年後の100円は、今の価値に換算すると90円の価値になってしまう、というものです。
※ここでは「割引率」という利回りも登場しますが、詳細は割愛します。
一方、2年後の100円は今の価値に換算すると98円になる。不動産価格に時間の概念を取り入れた場合、早く得られる利益ほど再投資で増やすことができるため、価値が高いと考えます。
小難しくて恐縮ですが、要は本ファンドではIRRを使っているので「5年間のキャッシュフローについて、ちゃんと時間的価値も考慮してますよ」とも言うことができます。
ちなみに正式な鑑定評価(調査報告書ではない)をとっている不動産クラファンでは、収益物件を評価する際、必ずIRRを含めた時間の概念も考慮されています。
ただ、不動産クラファンは売却までが一般的に1~2年と短いので、そこまで影響は大きくないのかもしれませんが・・・
DCF法とは
ソルミナではDCF法を使って価格を求めています。ソルミナの説明文を拝借すると、
売却予定価格は当ファンド終了後に対象物件の売電収益から得られる予定キャッシュ・フローを基にディスカウント・キャッシュ・フロー法により、ファンド終了時の売却予定価格を算定しております。
(引用)SOMLINAサイト
とあります。
この中の「ディスカウント・キャッシュ・フロー法」は、一般的には略して「DCF法」と言います。つまりIRRは「DCF法」という手法の中で用いる利回りの一種です。
DCF法とは・・・まで踏み込むとかなりの文量になるので超簡単に書いてみたいと思います。
DCF法は鑑定評価の手法の一つで、リート物件などの証券化対象不動産では必ず適用されます。
要は毎期のキャッシュフローの変動や売却時の価格まで考慮して不動産価格(収益価格)を算定しましょう、という手法で、もっとわかりやすく言うと「とっても細かく不動産価格を査定してますよ」という認識だけでも十分です。
クラウドリアルティもIRR(内部収益率)を公表されてましたが、僕の知る限りはそれだけかな。少なくとも、不動産クラファンではあまり表だって見ませんよね。しかも小数点下2桁まで計算されるケースは滅多にありません。
追記)コメントで教えてもらいましたが、オーナーズブックもIRRを使って利回り計算されてました!
何が言いたいのかと言うと、DCF法(IRR含む)を使って精緻に計算されているということがわかるので、個人的にはこの辺が事業者としてのこだわりを感じました。
一般的に収益用不動産の鑑定ではIRRはDCF法により査定するので、毎期のキャッシュフローの変動(収入、費用)までも考慮しています。
分析期間も考慮して利回りで考えるので「今の不動産価格がこう、賃料がこうだから表面利回りがこう」という単純なものでもなかったりします。
ちなみに、本来であれば利回り(キャップレート)には期間や変動の概念も入っているべきですし、僕がよく書いている利回りは一応形式的にはこれらも含んだ利回りです。
SOLMINAの事業スキーム
登場人物をまとめたスキームも整理しておきたいと思います。スキーム図をソルミナから拝借してみました。
自分なりに簡単に紐解いてみたいと思います。
本ファンドでは、まず出資者(投資家)と合同会社再エネファンド間で、匿名組合出資契約を締結します。ちなみに再エネファンドは第2種金商法の免許を持っていますから、投資家から出資金を集めることができます。
その後、再エネファンドは、メディオテックが所有する稼働済み太陽光発電所を買い取ります。ちなみにメディオテックは再生事業の実績が25年のベテラン選手で、メンテナンスも担当しています。
ここで、設備については再エネファンドが所有権を持ちますが、土地は借りるみたいですね。
つまり借地なので、土地の取得費用を抑えることができます。毎月一定額の地代を支払うことになりますが、それをさっ引いても土地が借地権であることが高利回りを実現できる要因の一つでしょうね。
「土地価格?太陽光発電事業用地なんて田舎の山林か雑種地なんだから安いんでしょ?」
とお思いかもしれませんが、けっこうそんなに単純なものでもなくって「どうぜ太陽光発電で儲けるんでしょ?」とスケベ心を出してくる地主もいるので、取得価格が相場以上に高値になることも少なくありません。
それに、土地を開発するには行政や森林組合の開発許可も必要ですから時間的なリスクも無視できません。
【関連記事】【SBISL】メガソーラーブリッジローンファンドの利回り7%は妥当?
詳細は↑の記事でも書いてますが、土地を賃借権とすることにも大きなアドバンテージがあります。
そのほかは、期中は太陽光発電所で発電した電気を、FIT(固定価格買取制度)に基づき、当初から決まった売電単価(27円)で東京電力に売電し、その売電収入を出資者に分配します。
ソルミナの良いところと注意点
ソルミナの良いところの一つに、上記のようにしっかりとIRRとDCF法を使って計算している点があると思います。
しかも太陽光発電設備は計算が単純で収入もFITで固定されていますから、住宅やオフィスなどの他の不動産のように収支変動は大きくはありません
太陽光発電事業では空室が発生したり、賃料が上昇下落することもありませんから。
もちろん、日照時間などの不確定要素もありますが、総じて収支が固定され、安定性が高いアセットです。
売却価格についても、収益価格により既に算定されているはずです。太陽光発電設備については売電収入は一定なので、他の不動産のように基本的に価値は(大きくは)下がりません。
※設備の老朽化により費用が嵩むことから収益を圧迫することはある。
つまり、不動産は売却時のタイミングが難しいけれど、本ファンドは収入は基本的にブレないし空室もないので、当初のもくろみ通りの価格で売却できる、とも言えます。
これだけ見ても、いいファンドなんじゃないかな~と思います。
ただ、注意点もあって、ソルミナは運用期間が5年と長期であること。
匿名組合型では急に現金が欲しくなっても、途中で解約や一部の払い戻しはできないという制約があります。
もう1点。まず太陽光発電事業ですから、住宅やオフィスなどのように市場が確立していないことから、売却時の流動性がやや気になります。
ただ、一般的な太陽光発電事業は数十年ですから、それに比べると運用期間が5年と短い期間で設定されています。
あとはそうですね。台風などの突発的な災害による修繕費用がかかってくるかもしれないこともリスクでしょうか。でもまあ、これはどんな不動産に対しても言えることですけど。
まとめ
けっこう長くなってしまったのでまとめます。
- ソルミナはIRRとDCF法を採用し、利回りは小数点下2桁まで計算されている。
- 太陽光発電事業は売電収入が決まっており、期中の収益、売却額を算定しやすい。
- GK-TKスキームのほか、借地権であることが高利回りを実現できる要因の一つ。
- 注意点は5年間の長期投資になることと、売却時の流動性。
クラウドファンディングを使った太陽光発電事業ということで、個人的にもソルミナにかなり注目しています。
総合的に見て、太陽光発電事業の安定性と高利回りを両立させた「良いファンド」なんじゃないかな~というのが僕の結論です。
\高利回りの太陽光発電事業に投資/
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