投資の時間

不動産鑑定士のリアル資産運用(投資予算3000万円)

【保存版】不動産鑑定士が教える知らないと損する利回りのこと

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投資家にとって最も重要な判断要素が利回りです。

 

でも、分かったようでよく分からないのが利回り。「利回りは高ければいいんでしょ?」っと思ってませんか?また投資物件検索サイトの利回りは信頼性があると思ってませんか?

 

利回りが分かれば資産の適正な価格や売り時・買い時」も分かります

 

利回りの考え方は金融工学的なアプローチであり、普遍的なので不動産だけでなく、金融商品でも考え方は同じです。

 

この記事では、利回りをできるだけ分かりやすく解説しました。利回りを詳しく解説したブログがなかったので記事にしてみました。利回りは難しい概念ですが知らないと本当に損をしてしまうので、ぜひ利回りをマスターして下さいね!

 

 

1.【プロローグ】利回りがなんでリスクなの?

 

「リスクが高いと収益が減少するから利回りも低くなるんでしょ?」と勘違いされている方もいますが、資産の持つリスクには収益の増加や減少は関係ありません。

 

<誤った考え方>
× リスクがある。 → 収益が減少する。 → 利回りが低い。

 

資産の持つリスクとは、その資産が生み出す将来の予測不可能な収入の変動(ボラティリティ)です。

 

つまり、将来、収益が予測に反して上昇することもリスクであり、収益が予測に反して下落することもリスクです。「その資産から発生する収益の非安定性」こそがリスクであり、簡単に言うと「その資産の上昇・下落を現時点で予測できないことがリスク」と考えます。

 

当初から分かっていたリスクには対策が打てるのでリスクではありません。

 

そして、このブログで何度も書いている「リスク is 利回り」です。利回りが高ければ、将来予測しなかった事態が発生する可能性(=リスク)も高くなります

 

もし、「リスクは低いけど利回りが高い物件(金融商品)です!」と言われたら要注意!そんな物件(金融商品)はこの世に存在しません。

 

なぜなら、もしそのような物件(金融商品)が存在したら、これを買う人は必ず得をするので需要が競合し、価格が高騰します。その結果、利回りは下がるからです。

 

2.利回りとは

 

(1)元本価値に対する収益率

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利回りは不動産鑑定評価では還元利回り(キャップレート)といい、不動産の収益価格を求めるときに使いますが、難しい用語は使わずにここでは単に「利回り」といいます。

 

利回りとはざっくり言うと「元本価値に対する収益率」で、式で表すとこちら。

 

利回り=収益÷元本

 

このうち、収益とは現在の収益ではなくその資産から得られると予想される収益(将来予測も考慮した収益)であり、元本とは現在の元本価値です。現在(元本)と将来(収益)から利回りを求めているため、利回りには将来予測も考慮する必要があります。

 

↑の①をさらに詳しく書いたのが②です。

 

将来予測も考慮された利回り=資産から得られると予想される収益÷現在の元本価値

 

投資物件検索サイトでよくある利回りは現時点の利回りであり、将来予測をきちんと考慮していないことが多いので注意が必要です。将来予測がいい加減な利回りは役に立ちません。

 

(2)金融工学的アプローチ

 

利回りは、一時的に「今の賃料はいくらで購入金額がいくらだから利回りはいくらね」...といった単純なものではなく、遠い将来までを見据えた利回りを考えます。

 

ただし将来の予測とは難しく聞こえますが、金融工学的にアプローチすれば、将来起こりうるリスクに備えて現時点でも様々シナリオを想定して利回りを判断しましょう、ということになります。

 

その中で一番現実味のあるシナリオをもとにした利回りを標準とし、それ以外のシナリオ(予測不可能なリスクもふまえて)も確率統計で判断し、適正な利回り(適正な資産価格)が決まります。

 

同じ資産でも、利回りは一定ではなく、投資家が「どこまで先を見ているか」によって利回りは変わります


投資家の数だけ利回りは無数にあるのです。

 

3.今は売り時か買い時か?

 

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現在の不動産市場の利回りは、平成バブル期(好景気に不動産価格が極めて上昇した時代)の水準と同じくらいまで下がっています特に東京都心では需要が競合し、かなり低い利回りで取引されています。

 

利回り=収益÷元本ですから、これは分子である収益(賃料水準)は変化していないのに、分母である元本価値が高くなりすぎているため利回りが低くなる、というロジックです。

 

このような時代は投資家にとっては期待利回りが低くなり、高い価格で物件を買うことになるため、現在は「買い時ではなく売り時」ということになります。特に不動産初心者には参入障壁が高くなっています。

 

また価格の高い都心では物件を買えない投資家が地方で探すようになっています。

 

投資家にとって利回りが高い地方ほどお買い得なのですが、都心の物件不足から需要が地方にも波及し、地方でも利回りは低くなってきているため、今はお買い得ではありません。

 

つまり、今は不動産投資ブームのピークにあるので利回りが低く、投資物件を進んで買うタイミングではないよ、ということになります。

 

www.investment3000.com

  

4.粗利回りと純利回り

 

一口に利回りといっても、たくさんの種類があります。一般的に不動産市場で使われるのは粗利回りで、それ以外にも純利回り、期待利回り、取引利回り、割引率なども利回りの一種です。

 

よく投資物件検索サイトで「利回り〇%です!」と記載がありますが、これらは粗利回りです。彼らは、できるだけ利回りを高く見せたいので、粗利回り(表面的な利回り)を使っています

 

ここでは代表的な粗利回りと純利回りについて解説します。

 

(1)粗利回りとは

 

粗利回りとは、単純に現在の賃料収入を購入価格で割った利回りです。

 

粗利回り=現在の賃料収入÷購入価格

 

表面利回り、グロス利回りともいい、ざっくりとした利回りを把握するときに使います。不動産業界の現場や投資物件検索サイトでは「粗利」と略して使うことが多いです。一般的に粗利回りは、後述する純利回りよりも高くります。

 

(2)純利回りとは

 

純利回りとはざっくり言うと、その物件の取得にかかったすべての費用を考慮した利回りです。おおむね貸主の実入りに対する利回りと考えると分かりやすいですね。

 

正確に言うと、純利回りはすべての収益(※1)からすべての費用(※2)を控除した後、敷金などの運用益と資本的支出(物件価値を高める支出のこと)を加算して、すべての投資額(※3)で割った利回りです。

 

  • (※1)現在の賃料・共益費・駐車場代・その他収入
  • (※2)維持管理費・修繕費・募集費用・固定資産税・都市計画税・火災保険・地震保険
  • (※3)物件価格・仲介手数料・所有権移転登記費用・不動産取得税など

 

実質利回り、ネット利回りともいい、すべての必要諸経費を考慮するため一般的に純利回りは粗利回りより低くなります。

 

たとえ賃料収入が多くても、必要諸経費が高ければ実入りは少なくなりますので、注意が必要です。粗利が高くても、純利が低ければ投資家にとって買う意味がありません。金融商品の場合は信託報酬(手数料)まで考慮しましょう。

 

投資では、投下した元本を回収しなければならないため、得られるであろう収益のみでなく、最初に投入した資金のすべてを考慮すべきであり、単純な粗利回りではなく、きちんと純利回りで考えることが必要です。

 

(3)その他の利回り

 

①期待利回り
投資家が投下する資本に対してどれだけのリターンが期待しているかを示します。あくまで投資家が「事前」に期待している利回りにすぎません。

 

②取引利回り
実際に市場で取引されたときの元本と収益の割合を示します。投資の指標にはなるが不動産は物件ごとの個別性が高いので参考程度にして下さい。

 

③割引率
投下資本収益率のこと。投資期間において、初期投資元本の回収が期待できる収益率のことです。割引率は一般的な投資家が物件を保有するであろう期間に対応するため、利回りのように将来の収益の変動予測と予測に伴う不確実性を考慮していません。

 

5.利回りはどうやって査定するのか?

 

利回りの査定方法はこちら。

 

(1)マーケットの利回り

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大抵の投資家や不動産業者が把握している利回りは、実際に市場で取引されている利回り(取引利回り)です。

 

地域によって利回りには差異があり、取引利回りを知ることでその地域のおおむね標準的な利回りを把握することができます。投資の指標にはなりますが、不動産は物件ごとの個別性が高いため、物件ごとリスクを考慮した利回りを把握した方がよいでしょう。

 

(2)リスクを積み上げる利回り

 

主に不動産鑑定士が利回りを査定する際に使う理論的な利回りです。大切なので何度も書きますが、「リスク is 利回り」なので、個別の物件ごとにそのリスクを積み上げていき、利回りを査定する方法です。

 

例えばこれら①~④のリスク(↓)を加算していくことで利回りを算出します。 

 

考慮される主なリスク

①その地域の標準的な利回り
取引利回りなどで把握する。

②その物件固有の立地条件
駅距離、液状化などの災害履歴など。駅距離が遠いほど需要が減るのでリスクとして利回りを積み上げる。また液状化にあった地域などでは需要が減るのでリスクとして利回りを積み上げる。

③建物の築年数
築年が経過している物件ほど、思わぬ修繕費がかかる可能性が高くなるためリスクとして利回りを積み上げる。

④現行の賃料水準
賃料水準が相場より高ければ賃料下落リスクとして利回りを積み上げる。など

 

6.まとめ

 

以上をまとめると次のとおりです。

 

  • その資産の上昇・下落を現時点で予測できないことがリスク。
  • 何度でも言おう「リスク is 利回り」と。
  • 利回りとはざっくり言うと「元本価値に対する収益率」。
  • 投資家が「どこまで先を見ているか」によって利回りは変わる。
  • 都会に加え地方でも利回りは低くなっている。今は買い時ではない。
  • 粗利ではなく純利で考えよう。

 

利回りは実は本当に難しのですが、基本的な考え方を知っていると知らないのでは大きな差が出ます。投資家にとって必須とも言えますので勉強しておく価値は十分にあります。