不動産クラウドファンディング投資研究所

サラリーマンを卒業した不動産鑑定士が、不動産クラウドファンディングに投資してみた

SBISL地域創生ローンファンド1号 (札幌)の担保評価がおかしい

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こんにちわ、トッティです。

 

SBISLから新ファンド「SBISL地域創生ローンファンド1号 ~札幌~」の募集がありますね(募集開始は2019年11月12日 10:00)。 

 

このところ、SBISLでは個人的に「不動産担保ローン事業者ファンド」しか投資できません....

  

オーバーローンやSPCスキームなど、昨今のSBISLでは「あれ?おかしくない?」っという点が個人的にありますが、本ファンドも手が出なさそうです(苦笑)

 

※くれぐれも、僕の主観で投資を否定するものではありません。

   

 

担保は土地(解体予定の建物を含む)

 

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今回の「SBISL地域創生ローンファンド1号 ~札幌~」の概要はこちら。

 

  • 貸付額:4億1,000万円
  • 担保:借手が取得予定の事業用地
  • 担保価値:1億800万円
  • 価値の算定方法:取引事例比較法×70%(早期売却を考慮)
  • 資金使途:不動産の取得資金・建築確認許可の取得費用の一部

 

「事業用地を取得し、ホテル案件としてのプランニングを行い、付加価値を高めた後、借手が組成するファンド等へ売却を行う」とあります。

 

とんてもないオーバーローンであることはとりあえず置いておいて、担保は「借手が取得予定の事業用地」と記載されていますね。

 

また、SBISLホームページの「手数料・リスクについて(PDF)」を見ると、「土地と解体予定の建物が担保目的物」と記載があります。

 

本件不動産取得者への本貸付債権等を被担保債権として、①本件不動産取得者が取得する予定の土地に抵当権を、②本件土地上に存在し、本ファンドの貸付実行日から1 ヵ月以内に解体予定である建物に抵当権を設定することを予定しております(以下上記①②の本件土地、本件建物を総称して「担保目的物」といいます。)。

(出典)SBISLホームページ「手数料・リスクについて(PDF)」を一部加工

 

解体予定の建物に価値はないので、概ね担保価値≒土地価格」と考えて差し支えないと思います。

 

※本来であれば、既存建物の解体費用を考慮する必要があるので、土地価格(担保価値)は更に低くなりますが、早期売却修正率70%に含まれると仮定します。

 

例えば、ディベロッパーズローンファンドでは、「土地(担保)の上に建物を開発し、土地建物の売却額が返済原資になる」ので担保は「土地と竣工後の建物」になりますが、

 

今回の地域創生ローンファンドは建物(ホテル)竣工前に返済期限が訪れるため、担保は「土地のみ」。

 

ディベロッパーズと本ファンドは明らかに担保の性質が異なりますね。

 

担保の違いに注意

 

  • ディベロッパーズ:土地と竣工後の建物が担保
  • 地方創生ローン:竣工前の土地のみが担保

  

担保の評価方法がおかしい

 

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担保が「借手が取得予定の事業用地」ですが、この担保価値がなぜか変化します。

 

  • 「現況の更地価格」:取引事例比較法×70%→1憶800万円
  • 「将来の想定事業収益に基づく事業価値」:札幌ホテルの収益価格(土地)→4億3,300万円

 

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*貸付額(予定)について

■収益還元法により算出した以下の価格を参考に、貸付額(予定)を決定しています。

札幌ホテルの収益価格(土地):4億3,300万円

札幌ホテル事業の見積年間純収益 約8,800万円(運営収益 約1億1,000万円-運営費用等 約2,200万円)に基づく収益価格を14億6,000万円と算定し、建物工事費等10億2,700万円を控除して、土地の収益価格としています。

 

(出典)SBISLホームページ

 

つまり、「今の土地は1憶800万円の価値しかないけど、ホテルが完成すると土地の価値が上昇して4億3300万円になりますよ。だから完成前だけど4億1000万円貸付ますよ」と読み取れます。

 

土地の評価方法は、不動産鑑定でいうところの「簡易開発型収益還元法」(※)のようなものを採用していると思いますが、明らかに間違ってますね。

  

(※)将来的に収益を生み出す土地建物一体として得られる事業収入を基に純収益を査定した後、建物建築費を控除し、土地に帰属する純収益から土地価格(収益価格)を求める方法。

 

建物が完成したって土地の価値は上昇しない

 

結論から言うと、収益物件(ホテル)が完成したからといって、土地の価値は上昇しません。

 

その理由は、本来の土地価格(更地価格)とは、最有効使用(最も価格が高く査定される土地の使用方法)にもとづく価格だからです。

 

最有効使用とは、ある不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用方法をいう。 この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。

(出典)不動産鑑定評価基準

 

※例えば山林を造成・開発したり、農地を宅地に転用する場合などは、土地の価値は上昇します。

 

辛口ですみません。一般の方には分かりずらいと思いますが、不動産鑑定に携わる人にとっては基礎中の基礎です。

 

SBISLは地域創生をうたっており、「有効活用されていない土地や建物に最適なプランニングを施し、その不動産の持つ本来の価値を最大化させる」ことをアピールしたかったのだと思います。

 

気持ちは分かりますが、土地価格は一つしかないので、SBISLの評価のうち、1億800万円の比準価格か、4億3300万円の収益価格のどちらかに統一すべきですね。

 

竣工後の建物にも抵当権を付けるなら分かるけど....(建物が完成すればオーバーローンにはならないため)

 

資金使途が「不動産の取得資金・建築確認許可の取得費用の一部」であるならば、個人的に、貸付額は1億800万円に留めて欲しかったですな。

 

書いてあることが本当に正しいのか?

 

本ファンドは最終的に上場企業の連帯保証(リコースローン)で担保されるとは思います。

 

ただ、長年、リートの開発型案件や銀行の担保評価の世界で鑑定してきた中では、担保評価がちょっと考えられなかったので、書かせていただきました。

 

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釣りっぽいタイトルになってしまったかもしれませんが、本ファンドで担保を売却することになった場合、結局どっちの価格で売れるのかが分からないので....

 

まさか不動産鑑定士がこんな2重評価をすることは考えられないので、担保評価は素人さんがやってるのかもしれませんね。

     

大手業者では、つい説明をパッっと見ただけで投資してしまうこともあると思います。

 

できれば投資の前に、十分時間をとって確認されることをおすすめしたいですが、それも難しいでしょうから、まずは「書いてあることが本当に正しいのか」と疑ってみることが大切だと思います。

 

いろいろ書いてしまいましたが、本ブログもがんばって書いてはいるものの、間違えることもあるので(すみません)、情報を丸飲みせずに、ご自分で確かめていただければと思います。

     

 


   

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※クラウドファンディングは元本を保証する商品ではありません。投資する前は、ご自分でよく調べてみてくださいね。

 


  

【クラウドファンディング投資額集計】 

業者 投資額 累計分配金(税引前)
SBISL 2,300,000円 150,151円
OwnersBook 2,400,000円 103,726円
maneo(109万円期失) 1,890,000円 269,227円
クラウドバンク 1,230,000円 279,121円
CREAL 1,210,000円 26,023円
Funds  503,192円 6,427円
SAMURAI 600,000円 3,500円
FANTAS funding 750,000円 8,656円
LCレンディング 50,000円 18,708円
クラウドクレジット 200,000円 16,846円
Pocket Funding 150,000円 817円
COOL 30,000円 111円
合計 11,313,192円 892,018円