不動産クラウドファンディング投資研究所

サラリーマンを卒業した不動産鑑定士が、不動産クラウドファンディングに投資してみた

SBIソーシャルレンディングが攻めてる話【用語:質権とは】

 

世界同時株安で株式市場は混乱してますが、ソーシャルレンディングの資産運用は株価と比較すると安定しています。

 

その中で今、SBIソーシャルレンディング(以下SBISL)が攻めてます。昨日のファンド募集に続き、本日も募集がありました。昨日の募集では即融資額を満額調達。相変わらず人気が高いですね。

 

今回のブログでは本日募集されたファンドへの投資と、貸付スキームで聞きなれない用語「質権」が登場しましたので、それを解説します。

 

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元本償還の実績

 

本日募集されたのは、SBISLで取り扱っているファンド3種類のうち、「不動産担保ローン事業者ファンド」です。「不動産を担保とした貸付事業を行っている企業向け」に貸付を行うファンドで、これまで延滞遅延とデフォルトは発生していません。

  

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その名の通り不動産担保が付いており、利回りは年利3.2~4.7%(税引前)と固めでしたが、今回募集ファンドの期待利回りは年利7.2%(税引前)と、これまでの本ファンドの中では高い利回りです。ほかのソーシャルレンディングサービスの不動産担保付ファンドの利回りは5~7%なので、SBISLが投資家受けを狙って、高利回りで攻めてきています

 

これまで延滞遅延とデフォルトが発生してないのは、年利3.2~4.7%(税引前)であった頃の話であり、今回、同ファンドで初の試みとなる期待利回り7.2%(税引前)では過去の実績と素直に比較することはできませんので、そこはリスク要因として注意が必要です。権利関係が複雑になっていることも利回りが高くなっている要因と考えられます。権利関係については後ほど解説します。

  

SBISLの特徴

 

ここでSBISLの特徴をおさらいしておきます。

 

  • 1万円から投資可能
  • 利回り(年利) 3.2~10.0%
  • 利益は毎月分配(毎月15日)
  • 自分の銀行口座と直接やりとりする
  • 出金手数料は無料
  • 取引履歴はCSV形式でダウンロードできる
  • SBIポイントがもらえる(現金に交換可能)

 

利回りが上限10%なのは「カンボジア技能実習生支援ローンファンド」の利回りが高いからです。ただし、このファンドは利回りが高い分、リスクも高くロールオーバーもあるので要注意です。

 

また、SBISLの大きな特徴の一つとして、ファンドに投資する時は、自分の口座から各ファンドに直接振り込むことになっています。このため、毎回振込手数料がかかります。なお、分配金と償還金も、直接自分の銀行口座に振り込まれます。

 

最低投資額の1万円を利回り4%で運用した場合、収益は400円ですが、振込手数料が400円かかればプラマイゼロ......!

 

SBISLは「1万円から投資できるよ!」とうたってますが、少額投資には向きません。maneoやクラウドバンクなど、専用の口座があある他のソーシャルレンディングで慣れている方は要注意です。手数料無料のネット銀行の口座を作ってから投資を始めるのがおすすめです。

 

SBISLの利回り

 

SBISL側の手数料率を控除した後の利回りはこちらです。

 

<利回り・運用期間>

  • 不動産担保ローン事業者ファンド:利回り3.2~4.7%、期間14カ月
  • オーダーメイド型ローンファンド:利回り7.0%、期間10カ月
  • カンボジア技能実習生支援ローンファンド:利回り10.0%、期間1年

 

これらの利回りは、あくまで投資家が期待する「期待利回り」ですので、実際の利回りではありません。また税引き前の利回りなので、純利回りは期待利回りより低くなります。

 

SBISLの手数料とは「管理手数料」と「委託手数料」で、それらは借手から徴収しているので、基本的に貸手は手数料の負担はありません。

 

融資から得られた利息から手数料と源泉税(20.42)を控除した額が自分の銀行口座に入金された後、SBISLから税務署に控除額が納付されます。

  

実際に30万円投資してみた

 

不動産担保ローン事業者ファンドPlus22号に30万円投資してみました。

 

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期待利回り7.2%、運用期間1年です。担保物件付きで利回りは7.2%。権利関係が複雑なこともあり、これまでの同ファンドより高い利回りです。

 

スキームを紐解く【質権とは?】

 

 今回の貸付スキームはややこしく、「質権」という聞きなれない用語もあるので、一つ一つ紐解いていきます。

 

貸付スキーム

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 まず、SBISLが持つ今回の担保物権について、このように記載されています。

 

借手が「複数の第三債務者」に対して有する「抵当権によって担保された貸付債権」に質権を設定。これにより、弊社は抵当権を実行することができます。

 

通常の担保物権は「抵当権」がほとんどなので、「質権」ってなじみがないですね。質権とは民法で定められてる担保物権で、抵当権と同じようなものなのですが、稀に抵当権ではなく質権によって融資が実行されることもあります。

 

お金の流れと権利関係の整理

  1. 「SBISL」が「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」に対して、貸付事業資金として15億円を貸付ます。
  2. これにより「SBISL」は「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」に対して15億円の債権を有していることになります。
  3. 「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」が「第3債務者」に対して、「第3債務者」が保有する不動産を担保として〇億円の貸付を行います。
  4. これにより「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」は「第3債務者」に対して〇億円の債権を有していることになります。
  5. 「SBISL」は「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」が「第3債務者」に対する〇億円の債権に「SBISL」を質権者として債権質を設定する契約を結びます(債権に権利質が設定された場合は「債権質」といいます)。
  6. 万が一、「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」から「SBISL」への15億円の返済が滞ってしまった場合、質権者である「SBISL」は、「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」の「第3債務者」に対する〇億円の債権の一部を自ら行使し、「第3債務者」に対して担保不動産を売却することにより「SBISL」に15億円を支払うよう求めることができます。

 

つまり、借手である「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」が債務不履行になった場合、「SBISL」が「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」の持つ「第3債務者」への抵当権を、「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」の代わりに行使することができるため、15億円が返済されるということになります。

 

担保物権の目的物に債権があるのは質権のみで、抵当権では債権を目的物とすることはできません。このため、今回のケースでは抵当権ではなく質権が設定されています。

 

今回の借手である「複数の借手(不動産担保ローン事業者)」は、担保不動産の評価額の70%を上限とした金額を貸し付ける事業を行っている企業なので、「第3債務者」からの返済が滞った場合は、抵当権を行使することにより担保不動産を売却するすることができます。貸し付け金額は担保不動産の評価額の70%を上限としているので、担保不動産の売却により融資額は返済可能ということになります。