ソーシャルレンディングとの相性が良い不動産。その不動産には様々な投資法があります。
現物の不動産、リート・ファンドなどの証券化対象不動産のほか、不動産特化型クラウドファンディング、不動産融資型ソーシャルレンディングなども不動産投資の一種ですね。
銀行による融資引き締めなどにより不動産市況は転換期にありますが、クラウドファンディングなどに代表される新しいサービスも登場し、不動産投資は盛り上がりを見せています。
今回はソーシャルレンディングとその他の不動産投資との比較を中心に、不動産投資について横断的にまとめてみましたので、参考にして下さい。
不動産投資の種類と仕組み
不動産投資を大別すると以下の4つの種類になります。全ての不動産投資には「不労所得に近い性質がある点」と「不動産市況が収益に影響する点」などが共通しています。
現物の不動産投資
自分で戸建、アパートなどの貸家を購入し、物件管理をしながら家賃収入を得て、最終的に売却を行って売却益を得る仕組みです。
ソーシャルレンディングが貸付業なのに対して、現物の不動産投資は不動産業(大家業)となります。
大家業であるので、他の不動産投資とは異なり、収益は自分でコントロールすることができますが、購入するためには多額の資金が必要となります。
証券化対象不動産
投資家から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃貸料収入や不動産の売買益を原資として投資者に配当する仕組みです。
投資先にはJリートや私募リート、私募ファンドなどがあり、金融商品である投資信託の一つです。投資信託ですので複数の不動産が一つの商品としてまとまっており、分散投資ができる点が他の不動産投資と大きく異なります。
証券化対象不動産は投資家に不測の損失を与えないため、物件を評価する不動産鑑定士に対して非常に精緻でシビアな評価が求められます。ここがトッティの主戦場で投資家保護のため戦っています。
不動産投資型クラウドファンディング
投資家から集めた資金で直接不動産への投資を行い、そこから得られる賃料収入や不動産の売却益を原資として投資者に収益を分配する仕組みです。
証券化対象不動産と同じような仕組みですが、証券化は複数の物件に一括で投資できるのに対して、クラウドファンディングは基本的に1つの物件に対して投資を行います。また1万円の少額からも投資ができます。
不動産融資型ソーシャルレンディング
クラウドファンディングの一種で融資型クラウドファンディングとも言われています。
お金を「投資したい人」と「借りたい人」をインターネット上で 結びつけるP2Pサービスで、他の不動産投資との大きな違いは貸付業であるため、収益が利息収入となる点です。
その他の不動産投資との違いは「4.ソシャレンとそれ以外の不動産投資の違い」で詳しく解説します。
ソーシャルレンディングに不動産が多い理由
ソーシャルレンディングの融資先には不動産業を行っている業者が比較的多くなります。不動産業者が不動産購入のための資金をソーシャルレンディングを利用して調達しているわけです。
ソーシャルレンディングが不動産業と相性が良い理由は「不動産業は収益の見通しが立てやすい」という点にあります。
不動産業の特徴として、不動産を購入する前のある程度の事業収支と売却時期を決めてから購入します。
購入価格は不動産鑑定士が査定した将来収益と売却額を反映した収益価格(直接還元法とDCF法)などを参考にして決めています。必要資金が明確化されているため、ソーシャルレンディングとの相性が良くなっています。
各々の不動産投資の特徴
各々の不動産投資の特徴を一覧形式でまとめました。
不動産投資の種類と特徴まとめ
区分 | 現物 | 証券化 | クラファン | ソシャレン |
業態 | 不動産業 | 不動産業 | 不動産業 | 貸付業 |
法律 | なし | 投資信託及び投資法人に関する法律 | 不動産特定共同事業法 or 貸金業法 | 第1・2種金融商品取引業 and 貸金業法 |
投資物件の透明性 | 高い | 高い | 高い | 低い |
収入の源泉 | 家賃収入+売却益 | 家賃収入+売却益 | 家賃収入+売却益 | 利息収入 |
収入の安定性 | 自分でコントロール | 運営会社に依存 | 運営会社に依存 | 金利収入が確保 |
投資資金 | 100万円~数億円 | 10万円~100万円 | 1万円~ | 1万円~ |
投資先 | 1つ | 複数(投資信託) | 1つ | 1つ |
アセットタイプ | 戸建住宅、集合住宅 | 様々なアセット | 様々なアセット | 様々なアセット |
物件選定 | 自分で選定 | 運営会社が選定 | 運営会社が選定 | 運営会社が選定 |
価格変動(相場の影響) | 大きい | 大きい | 大きい | 小さい |
共通リスク | 不動産市況 | 不動産市況 | 不動産市況 | 不動産市況 |
個別リスク | 稼働率低下、流動性 | 稼働率低下、流動性 | 稼働率低下、流動性 | 貸倒れ、返済遅延 |
物件管理 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
利回り | 7~20% | 4~5% | 4~7% | 6~10% |
ソシャレンとそれ以外の不動産投資の違い
まとめた一覧表を基に、ソシャレンとそれ以外の不動産投資の違いをピックアップしてみます。
業態の違い
不動産融資型ソーシャルレンディングは「不動産業を行っている業者に対する貸付業」ですが、その他の不動産投資は不動産業そのものになります。
収入の源泉
ソーシャルレンディングは収入の源泉が利息収入なのに対して、その他の不動産投資は家賃収入・売却益となります。このため、ソーシャルレンディング以外の不動産投資では、物件の運営方法によっては収益が変動します。
収益の安定性
ソーシャルレンディングは比較的安定している金利収入が得られるという点でそれ以外の不動産投資と大きく異なります。価格変動が少なく相場の影響を比較的受けにくいとも言えます。ただし、借主が債務不履行となった場合は担保不動産を売却することになるので、売却価格は相場の影響を受けることになります。
リスク
ソーシャルレンディングのリスクは融資先の貸倒れ、返済遅延や運営会社の破綻です。その他の不動産投資のリスクは直接の不動産に対するリスクとなり、稼働率低下、市況悪化による流動性の低下などになります。
投資先の数
ソーシャルレンディング、現物の不動産、クラファンが1つの投資先に投資するのに対し、証券化対象不動産(リート)は投資信託ですので分散投資をしています。
投資金額
ソーシャルレンディング、クラウドファンディングは1万円からでも投資することができるのに対して、リートは10万円~100万円、現物の不動産は100万円~数億円を投資します。このため、現物の不動産は銀行からの融資により物件を購入するケースが多くなります。
利回り
現物の不動産の利回りは、物件によっては高利回り(7~20%程度)になるのに対し、証券化対象不動産とクラウドファンディングは低めの利回り(4~7%程度)です。ソーシャルレンディングはその中間の利回り(6~10%程度)になるケースが多いです。
物件情報の透明性
ソーシャルレンディングは貸金業という性質上、融資先や担保物件の詳細は開示されません。ソーシャルレンディング以外の不動産投資では物件情報などが公表されており、投資先を詳細に確認することができ、透明性が確保されているという点も大きく異なります。
この点がソーシャルレンディングの1番のデメリットだと思います。
透明性の確保については、2018年6月に金融庁の指導で、融資先の会社の情報開示がソーシャルレンディング各社に通達されました。今後はソーシャルレンディング投資に関しても、情報の透明性が高まっていくことが期待されています。
ソシャレンとクラファンの違い
分かりにくいのがソシャレンとクラファンの違いです。大きなくくりではソシャレンはクラファンの一種です。
ソシャレンは「融資型クラウドファンディング」と呼ばれ、投資家から不動産業者へP2Pでお金を貸し借りするのに対し、不動産投資型クラウドファンディングは直接不動産物件に投資するという点で異なります。
まとめ
かなり気合を入れてまとめてみました。各々の不動産投資の特徴を知っておけば、その時々で最適な投資先を選ぶことができますよ。