投資の時間

不動産鑑定士のリアル資産運用(投資予算3000万円)

千葉県不動産市況から見る不動産投資の過熱化・終焉と新たな価値創造へ

 

人口減少と共に投資先が狭くなっている中、東京都心部の品薄感から地方部でも投資需要が波及し、競合が激しくなっています。

 

人口減少、高齢化社会といっても、不動産投資ではマーケットの情報収集と不動産知識の蓄積、工夫の仕方など、自分で需要を創出することでその不動産も生きてきます。

 

今は自ら多様な価値を創り出し、賃貸人を定着させることが求められており、それは都市部に限らず、地方部でも同じです。

 

また、Jリートなどの証券化対象不動産を取得するアセットマネージャーのみならず、戸建・小規模アパートなどへ投資する個人投資家でも考え方は同じです。

 

今回は、ぼくの住んでいる千葉県内の不動産市況についてまとめ、最後に昨今の投資用不動産ブームの過熱化と今後の不動産投資の方針についてまとめました。

 

今後は不動産市況分析を一つのコンテンツとして定期的に更新していきますので、不動産投資に活用してください。

 

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1.千葉県内の不動産市況

1)戸建住宅地の土地価格

 

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「東京への交通利便性の高いエリアと、それ以外のエリアで格差が一段と広がっている」

 

・東京都心寄りの浦安市、市川市や、東京湾アクアラインの接続部である袖ケ浦市、木更津市、君津市、内陸部では国際医療福祉大学の医学部を誘致した成田市などを中心に土地価格は上昇している。その他の地方都市、郊外部地域の土地価格上昇率は弱く、微増から横這いで推移している。


・特徴的なのは、東京近郊の中でも東京に隣接する浦安市は2011年3月に発生した東日本大震災時で液状化した地域であるが、その心理的影響もほぼ無くなり上昇幅が拡大している。また2020年オリンピックでサーフィン協議が開催される一宮市での土地価格上昇率が大きい。

 

・人口増加が続いているエリアは上昇、東京から離れたエリアでは人口減少が続き、地価下落に歯止めがかからない状態が続く。東京近郊の都市部に県内の他エリアの価値が吸い上げられているイメージ。

 

2)商業地の土地価格

 

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「東京近郊を中心とした地域の地価は上昇傾向」

 

・浦安市、市川市、船橋市、TX沿線の流山市などは大型商業施設整備等もあり、地価は上昇している。例えば市川市、船橋市ではバブル崩壊後の底値から約20%上昇している(但し、バブルピーク時の8分の1程度の水準に留まっている)。


・千葉駅周辺では千葉パルコや三越閉店もある一方で、千葉駅ビル再開発、東・西口再開発が進んでいるため、中心部の地価は上昇している。

 

・ 2018年2月に西武船橋店、2018年3月に伊勢丹松戸店が閉店。百貨店の相次ぐ閉鎖は一つの懸念材料ではあるが、百貨店という業態の旧態化が原因で、入れ替わるのは経済では自然なことなので、新しくなる商業地として期待が高まる。
 

3)マンション素地価格

 

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「東京近郊を中心とした地域は上昇傾向、立地条件が良好な素地は取得競争が激しい」

 

・JR沿線、TX沿線等、都心へのアクセスの優れる地域の素地価格は上昇しており、用地確保が厳しい状況。私鉄沿いは概ね横ばいで推移。

 

・海浜幕張、TX沿線の三井不など、豊富な資金力で有利とされる大手ディベロッパーは、市街地再開発、区画整理事業への参画するようになっている。特に人気エリアでは激戦で、中堅クラスはなかなか買えない状況が続いている。

 

・JR沿線でも東京近郊エリアは大手が参入するが、やや離れた地域(千葉市より南側など)では、地場の中堅クラスのディベロッパーが多く、大手は参入してこない。

 

2.千葉県内の投資用不動産

1)オフィス

 

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「投資を検討する地域の拡大」 

 

・千葉県にはオフィスビル自体が少ないものの、海浜幕張、千葉駅周辺などで外資系などの大手資本による取引・引き合いが見られる。地方でも需要が競合し、価格は上昇。成約までいかなくても気配値としての取引利回りが低下している。

 

・主要地域の空室率は改善傾向にある。特に船橋市は商業地として千葉県内では最も選好性が高い。一方、駅からやや距離のある地域では募集床も見られる。投資用物件としての東京都心部の品薄感が波及し、オフィス等の取引需要は継続して堅調に推移。

 

・千葉県でもリートをはじめ米系ファンドの外資系法人の投資需要は認められるようになった。投資物件が少なくなる中で、本格的な資金投入を目論んでいる。東南アジア(シンガポールなど)も新たな投資先として日本に目を向けている。


・千葉市では、機関投資家というよりも、10億円未満の個人投資が多い。国内富裕層の他、インバウンド投資もアジア系を中心にオフィス、住宅の取引が散見される(基本的に千葉市を良く知らない人たちが買っている印象)。

 

2)住宅

 

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「投資資金が都心近郊など好立地の新築マンションのほか、郊外部にも流入」 

 

・東京寄りの県内主要な地域(浦安市、市川市、船橋市など)を中心に、稼働率は安定している。取引利回りは東京よりの証券化対象不動産で4%半ばなど。千葉県内では総額10億円未満の取引が多い。

 

・リートの取引件数は概ね変わらず、検討エリアは広域的になっており、投資資金が都心近郊など好立地の新築マンションのほか、郊外部にも流入している

 

3)商業

 

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「円安の影響によるインバウンド増加で、アウトレット好調」

 

・市況感として取引利回りは横ばい傾向にある。中心商業物件は長期リース契約により高稼働な施設もある。取引利回りは、Jリートで千葉市の新規ショッピングモールを5%前半で取得するなど。


・郊外部の取得需要(国道16号沿いなど)が増加傾向にあり、投資家の検討エリアは広域的になっている。インバウンド増加で、アウトレットも好調である。

 

3.千葉県の市況トピックス

1)地方投資が拡大するも、供給には限りがある

 

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「東京都心部では実現できない高い利回りを求め、千葉県でも取引利回りは低下傾向。ただし、全体的に投資先が狭くなっている」

 

・旺盛な資金需要を背景に、東京都心部の利回りは、足元では利回り低下も底を打ったエリアも一部見受けられるが、絶対値としての利回りは低い水準にある。

 

・東京都心部では実現できない高い利回りを求め、千葉県でも大手資本による高額な取引・引き合いも見られ取引利回りは低下傾向にあり、特に証券化の対象となる不動産の価格上昇が顕著になっている。

 

・アセットタイプでも投資対象の分散化が進んでいおり、千葉県では立地面からオフィス需要は強くないが、物流需要が非常に高く、次いでホテル需要も非常に高い。

 

・その他、個人投資家向けの戸建住宅、アパート需要も、不動産投資ブームの中で価格が高騰し、物件取得しづらい状況が続いている。


・地方都市のオフィス需要には限りがある。商業施設や底地では、基本的にキャッシュフローは安定する。ホテルは需要に波があるものの、ビジネスと観光・実需を組み合わせるなど長期的な視点で対応していけば、2020年オリンピック後の波も乗り越えられるかもしれない。

 

2)ホテル需要の増加

 

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「東京ディズニーリゾートが好調であり、浦安市はもとより、広域的に宿泊客を取り込んでいる」

 

・インバウンドの恩恵を受け、成田空港と東京ディズニーリゾートがある千葉県ではホテル投資が増加し、東京ディズニーリゾート周辺やインバウンド需要の高いホテルを中心に、ADR(平均客室単価)、OCC(客室や宴会場の稼働率)は好調に推移している。

 

・2020年東京オリンピック後も中長期的に高いニーズがあるとみて、千葉・船橋・幕張・浦安等の主要商業地で企業のホテル開発が続いており、幕張・浦安ではリートによる取引も散見されるなど、更に成長が見込めるセクターとして注目される。

 

3)物流需要の増加

 

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「インターネット通販を中心とした旺盛な賃借需要を背景に、地価の割安感と、東京への接近性が優れることから大規模物流施設の開発が続く」

 

・開発用地としては、臨海部の工場の移転や撤退に伴う工場跡地のほか、工業団地造成で供給される。

 

・ただし、工場閉鎖件数も減少しており、浦安・市川・船橋等の臨海部の物流適地は減少している。このため、昨今では臨海部から地価の割安な内陸部(柏・流山・印西等)へのシフトが進み、GLP、大和ハウス等が流山IC付近に国内最大級の物流施設を開発しているほか、ラサール、GLP等が柏の国道16号沿いで大規模物流施設を開発している。

 

・臨海部に加え、内陸部においても開発競争(商業施設開発と競合することもある)に過熱感が出始め、土地価格や賃料も上昇している地域もある。

 

<外資・国内不動産大手が物流施設建設>

  • GLP(外資(シンガポール)系の開発大手)も積極投資。千葉県内では国内最大物流施設「GLP流山I、II、III」の3棟開発のほか、「GLP習志野」、「GLP成田Ⅱ」など。
  • 三井不動産、大和ハウス工業も積極的に物流施設を開発。三井不動産は南船橋駅付近で、大和ハウスは流山IC付近に国内最大級物流施設の開発など。
  • 外資系レッドウッドによる新規開発など(臨海部・内陸部)

 

・用地取得にあたっては、時間をかけて自治体と話し合い、開発許可を得て開発(大和ハウスの流山開発)するなど、誰も物流施設を建設していないエリアでの用地確保を進めるなどの事例も出てきた。

 

・圏央道について、2015年10月に埼玉県で全通し、埼玉県・神奈川県では大規模物流施設の開発が進んでいる。千葉県内では、2013年4月に東金―木更津間が開通したが、東京都心から距離があるエリアであることから、大規模物流施設の開発は今のところ進んでいない(県内では国道16号より内側が基本)。

 

・また、成田空港周辺の圏央道は現在計画中で、順調に用地取得が進めば2024年度に開通予定。今のところ、用地取得に影響は見られない。

 

・物流施設であっても、立地条件が良いことが人材確保には重要。従来はインターチェンジ近辺が適地とされていたが、鉄道やバスが利用しにくいケースも多く、マイカー以外では通勤しにくい。三井不動産は、自社で保有する駅徒歩圏内の土地を活用している(商業施設もできるような好立地)。

 

4.千葉県内の賃料水準

1)オフィス

 

「都心部の賃貸需要増の動きは県内にも遅れて広がっている。都心部賃料上昇で郊外で探すテナントが増加傾向にある」


・千葉県ではオフィスビルの新規供給はほどんどない。最も賃貸需要が強い船橋駅周辺の一部エリアで賃料上昇が見られる。今後の不動産市況の逼迫が継続すれば、その他地域でも上昇もあり得るが、現時点は比較的低額で成約したテナントに対し契約改訂時に増額交渉がなされる程度。

 

・船橋駅周辺は事務所利用に純化したビル等は少ないが、県内各地への営業拠点としての地理面・交通面の優位性により相対的に企業の立地意向が強い。空室の減少が続いていることで、テナント企業は条件に合う物件を見つけにくくなっており、立地や規格が劣るビルでオフィスを確保する場合が増えている。これまで人気が薄かった地域にも需要があふれ出している。一部、賃料も上昇している。


・船橋市以外では、現時点では賃料上昇につながるほどの勢いはないが、現在の活況が続けば賃料がじりじりと上がる可能性がある。

 

・千葉駅から徒歩10分圏内の築浅オフィスビルは、概ね稼働率がやや改善しており、一部で賃料を増額しているテナントも見られ、賃貸需要は回復傾向にある。2013年秋に竣工した千葉駅西口再開発ビルは、募集賃料をやや減額することで稼働率が向上し、安定稼働に入っている。

 

・幕張地域は東京都心の賃料上昇からくる郊外移転需要により、引き合いは地域全体でやや増加傾向にあるが、賃料水準に変化はない。なお、稼働率も地域全体で変動は見られない。

 

2)住宅

   

「都心部と郊外部で2極化が進行」


・市川市、浦安市などの東京寄りの地域で大きな賃料変動はない。人口減少が懸念される郊外部では賃貸需要は弱く、賃料は弱含み。築年数・駅への接近性等により賃料・空室率は二極化が見られる。

 

・千葉県には東京都心部の賃料上昇が遅れて波及するため、人口が増加している上位地域は将来的に賃料水準が上昇する可能性もある。

 

3)商業

 

「明確な賃料上昇には至っていない」

 

4)物流

 

 「大量供給されるも、それを上回る需要があり、賃料は比較的安定している」

 

5.不動産投資の過熱化と終焉(金融庁による投資用不動産の融資審査)

 

金融庁は26日、2018事務年度(18年7月~19年6月)の金融行政方針を公表した。アパートやマンション、シェアハウスなどを対象にした投資用不動産向け融資の実態調査の実施を盛り込んだ。融資の審査や管理体制の実態を把握する。金融機関や不動産業者が関与した入居率や賃料、顧客財産・収入状況などの改ざんといった顧客保護の観点から問題があるケースが発生したことを受け、金融庁は対応に乗り出した。

 

昨今の投資用不動産ブームの過熱化を懸念し、金融庁からの通達により、投資家への融資審査が厳しくなる可能性があります。

 

また、金融庁は金融機関の中でも、過半数の地銀の本業利益(貸し出し・手数料ビジネス)が赤字だと指摘しています。 

 

地銀の赤字化や再編が続くことは、まさに人口減少と共に投資運用先が狭くなっていることの現れです。

 

本来、地方ならではの多少のリスクがあってもイールドギャップ(投資利回りと長期金利との差のこと)が高い物件の組み合わせて、それらを運用する結果として、価格差を享受することができましたが、利回り低下や金融機関の融資規制でそれも難しくなります。

 

金融機関の審査が厳しくなり、これまで低金利で資金が供給されたことによる不動産投資パーティの終わりが近づいています。

 

これに加えて、不動産投資マーケットは将来的な利上げの不安もあります。

 

不動産投資について、金利が低いからと金融機関から融資を受け、やみくもに物件を取得する時代は終わりました。

 

今後は「自ら物件価値を創造する」または「将来が分からないからこそ知識を蓄える」時代に突入しました。